遙か昔、人と妖精達は共に助け合って暮らしていた。
しかし、人間は次第にその知恵を争い事に使うようになり、
周辺の民をことごとく支配し始めるようになる。
ここ、ヨーロッパでもいくつかの巨大国家が生まれ、妖精達は住処を追われていった。
なかには、ゴブリン族の様に地下に潜り、ひそかに世界征服の野望に燃える種族もあったが、
大部分は争いを好まず、山奥へと追いやられていった。
だが人間達は、彼らから奪った領土だけでは満足できず、互いに勢力拡張を目指して、
各地での小競り合いを繰り返していた。
北の国アレシアは、ヨーロッパ文化の中心から遠く離れ、
昔ながらの生活を続ける民族が集まっていた。
他国からの干渉をおそれた先代の国王は、周りの国々との国交を絶った。
以来アレシアの事は、ときおり人の噂話として伝わる程度になってしまった。
しかし、最近国内で何かが起きているらしく、国境には多くの兵士が姿を現すようになった。
ヨーロッパ中央には、万年雪を抱くアルプスの山々がそびえており、
東西、そして南北の交流を隔てている。
東の国パルティアは、東西交易の要衝として古くより栄えてきた国である。
現在も争いを好まぬ国王プトレマイシン二世のもと、国民は豊かな暮らしを甘受していた。
西の国フランクは、ヨーロッパ屈指の強国である。
しかし、国王トリスラム三世は、2人の息子達が相次いで旅に出てからというもの、
すべて疑り深くなった。
加えて、北の国の不穏な動きもあり、国内の情勢は不安定となる。
国王は国内の結束を強める為、北の勢力を牽制しながら、
長年のライバルであるローマに対し、戦いの準備をひそかに始める。
南の国ローマは、小国ながら議会制民主主義により、よく国がまとまり、
次第にその力を強めていった。
ローマよりさらに海を隔てた南には、古き都アレキサンドリアがある。
かつての栄光は見るべくもないが、初めての女王の誕生を機に、復興の兆しを見せていた。
ある日、ローマの町にほど近い海岸に一人の若者が流れ着いた。
身につけていた鎧は、何故かぼろぼろに傷んでいたが、それは明らかに異国のものであった。
直ぐに介抱されたその若者は、運よく息を吹き返す。
やがて彼は、奴隷として市場に出される。
引き取ったのは元老院のディラン。
長老は彼を「アレフ」と名づけ、剣闘士に鍛え上げる。
元々優れた剣士であったのかもしれない。
連戦連勝の彼は、すぐにローマ市民の注目の的となり、やがて市民権を得る。
おりしも市民権獲得の祝いの日、フランクによる侵略の報が届いた。
突然戦いを挑まれたローマは、急遽フランクを迎え撃つ準備を急ぐ。
だが、他に敵国があったのでは、戦いを維持するのは難しい。
直ちに議会が招集され、背後の敵、アレクサンドリアと和睦することになった。
アレクサンドリアの使者として、アレフの名が上がった。
彼を推薦したのは、元老院筆頭のネロだった。
反対する者はなく、アレフの派遣が可決される。
しかし、ネロの本当の狙いは、彼を追い払う事にあったのだった・・・。
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